クラーク記念国際高等学校 スポーツコースサイト > CLARKアスリート > 世界初!長谷川がスイッチBS1800(5回転)に成功し、一流ライダーの仲間入り!

世界初!長谷川がスイッチBS1800(5回転)に成功し、一流ライダーの仲間入り!

2021年10月。長谷川帝勝(たいが、STANCER)は人類の壁を越えた。スイッチ(不得手な右足を前にした滑走)、そしてバックサイド(背中方向への左回転)で体を5回転させ、雪上にピタリと舞い降りた(スイッチ・バックサイド1800)。しかも回転中にボードの中央を右手でグラブ(つかむ)する自分のスタイルを、かっちり決めた。4ヶ月後、北京五輪ハーフパイプ金メダリストの平野歩夢(TOKIOインカラミ)ら、国内では常に数人しかいない〝モンスターライダー(エナジードリンク・モンスターがスポンサーに付くスノーボーダー)〟の一員に加わった。世界のトップボーダーと認められての契約だ。

モンスターの〝M〟のロゴが入ったボードを手にする長谷川

長谷川 世界でも30人ぐらいの(モンスターライダーの)メンバーになれたのは、『自分のしてきたことが評価されたのかな』と感じて、うれしかったですね。小さいころから、人より練習はしてきたと思います。夏は学校が終わってから、羽島(岐阜)の屋内スキー場(昨年閉鎖)で毎日3時間。冬は奥美濃のスキー場の知り合いの家に居候して、滑っていました。普通はみんな苦手な(回転やボードの向き)方向があって、苦労するところを、すぐに合わせられるのは、自分の武器なのかなと思います。もちろんそれも、苦手な方を、意識して多く練習してきたからだと思いますけどね。

スノーボードの競技会に初参加したのは小学校3年生のころだった。2年後には、プロ資格を得るために出場した全日本選手権ジュニアの部のスロープスタイルで3位に入り、頭角を現した。小6から中1のシーズンは負傷続きで思い通りにならなかったが、中2で3回転半、中3で4回転に成功すると、高校入学からわずか半年で、さらに1回転を追加した。

異次元のエアで魅せる長谷川

長谷川 5回転をやって、(雪上に)立った時は、空中でどんな感じだったのかおぼえてないんですよ。多分必死過ぎて、それどころじゃない(笑)。ぐるぐる回らないで、1回転や2回転ぐらいで飛んでいる時はすごく気持ちいいんですけどね。5回転のコツは、まず4回転、4回転半を確実に飛べるようになること。その延長が5回転です。あとは、平野歩夢くんと同じように、ひざを曲げて低い姿勢にして、ボードの真ん中にポジションを取ることです。

今年2月の北京オリンピック出場も十分に狙える位置にいたが、5回転に成功した直後、10月23日の誕生日にスイスで行われたイベントの公開練習中に転倒し、左足首を骨折。現地で応急処置を施し、帰国後に骨と骨をワイヤーでつなぐ手術をするほどの重傷だった。2ヶ月後にようやく滑れる程度にまで回復したが、五輪出場に必要なポイントが獲得できず、一度目のチャンスはとらえられなかった。

長谷川 スノーボーダーはみんな我が強く、いろんなスタイル(考え方、指向)があって、必ずしもオリンピックを目指さない人もいますが、僕は4年後(ミラノ・コルティナダンぺッツォ五輪)を目指そうと思っています。出るからには、(平野)歩夢くんのようにしっかり成績を残すことも大事ですけど、自分が『この技をしたい』という技をしっかりメイクできれば、それが一番いいですね。ジャッジスポーツですから、自分が『いい』と思っても、ジャッジが気に入らなければ点は出ませんから、まずは自分のやりたいことを表現したい。自分の滑りができれば、点が出なくてもなんとも思いません。見た人と自分が、「かっこいい」と思うような滑りができればいいですね。種目はビッグエアもスロープスタイルも好きですが、自分の持ち味が出せるのはスロープですね。ビッグエアは一発飛んで終わりですから単純でわかりやすいですけど、(ジャンプや手すりの上を滑るなど多くの動作がある)スロープスタイルは最後まで何が起こるかわからない面白さがあります。見ている方はわかりづらい部分があるかもしれませんが、やっている自分は楽しいですね。

五輪出場は逃したが、モンスターと契約したことで、今季は世界最大のプロボーダーの祭典・Xゲームのインビテーション(招待)メールが初めて届いた。負傷明け最初の大会がXゲームで、「照準は合わせましたけど、ちょっと準備不足」(長谷川)の状態だったが、ビッグエアで6位に入賞し、十分に存在感は示した。

長谷川 世界との壁を知った感じでした。まだやることはいっぱいあるなと。雰囲気が他の大会とは違って、お客さんが多く、名前を呼ばれるペースも早くて、(飛ぶ前は)めっちゃ緊張しましたし、心拍数も早かった。バクバクでした(笑)平野歩夢くんが練習で飛んだ時なんか、大歓声が重低音のように響いて、サッカーのゴールみたいでした。僕もいつかこのぐらい(観衆を)沸かせられたらと、思いました。

 そんな長谷川が、クラーク国際を選んだのは、「(競技の特性に)理解がありそうだったから」という。コロナ禍で以前と比べれば海外遠征の日数はやや減ったが、それでも日本が夏の時期には南半球、冬は本場のアメリカ・ヨーロッパを転戦する。その合間に帰国してスクーリングに参加し、定期試験もこなせるのは通信制高校だからに他ならない。

長谷川 間違いなく言えるのは、〝クラークじゃなかったら、5回転は飛べなかった〟ということですね。笑ってますけど、本当にそう思います。久保先生、ありがとうございます(笑)

久保佳代教諭(右)とガッツポーズをする長谷川

【プロフィール】

長谷川帝勝(はせがわ・たいが)2005年(平17)10月23日、愛知・岩倉市出身。160cm、60kg。4歳でスノーボードに初めて触れ、岩倉南小3年で競技会初出場。小5のJSBA全日本スノーボード選手権大会ジュニアの部スロープスタイル3位。21年3月の世界ジュニア選手権ビッグエア優勝・スロープスタイル6位、今年3月の同大会はビッグエア2位・スロープスタイル4位。昨年10月に世界初のスイッチ・バックサイド1800(5回転)をメイクし、一躍脚光を浴びる。